注目が集まりはじめた今だからこそ、何を知るべきか?について考える
最近、金融教育の重要性が盛んに叫ばれています。
金融のことをあまり知らない「ふつうの人」にとっては、なにをどこまで勉強すればいいのかわからず、戸惑ってしまう人が少なくないのではないでしょうか?
また、高度な数学や複雑な会計、難解な投資理論の理解が必要だと思っている方もいるのではないでしょうか?
私としては、「ふつうの人」はそういったものを知る必要はないと思っています。
もちろん、金融や投資を本業や副業にしている人はそういったものへの理解も必要です。
また、趣味として株式投資などを行うためにはいろいろなことを勉強する必要もあるでしょう。
しかし、大多数の「ふつうの人」はそういったことを知らなくても、十分に豊かで幸せな人生を送ることができると思っています。
では、具体的にどこまでの金融知識を持てばいいのでしょうか?
そのイメージを掲載してみました。

これだけ知っておけば、個人としても社会としても十分、という水準の金融教育の必要
これを見ればわかるように、いわゆる「投資」のうち、「ふつうの人」が知るべきものはインデックス投資信託とその使い方のみであるといえます。
インデックス投資信託はそれほど種類があるわけではありませんから、いくつかのものを見比べて、その中から自分に合ったものを選ぶだけです。それも自分で考えることが難しい(おそらく大多数の)人は、FPに相談して決定することが良いだろうと思っています。
いずれ説明していきますが、投資大国でもあるアメリカではFPが顧客の資産を運用するスタイルが広まっており、日本でも大いに参考にすべきでしょう。
このような投資スタイルが一般化すれば、「ふつうの人」は、何千もある東京証券取引所の上場銘柄を比較検討したり、株価や外国為替の変動に一喜一憂したり、アパートの部屋が埋まっているか・家賃が支払われているかを気にしたりする必要はないのです。
もちろん、これらを楽しみたいという人はいるでしょう。
自分の気に入った企業の株式を買い、その成長を願い、株主総会で議決権を投じることは他では得難い経験ですし、投資対象の刹那の値動きから生じるチャンスとリスクはいつの時代も多数の人を魅了してやみません。
しかし、それは、自分が気に入った競走馬を信じて馬券を買うことや、ジャックポットを祈ってレバーを引くことと、本質的に差はないといえます。
いうまでもなく、すべての人にとって必須のものとはいえません。
「タイパ」を求める日本人に金融リテラシーを高めよ!は現実的でない
日本でもう30年にもわたって叫ばれ続けてきた「貯蓄から投資へ」や「貯蓄から資産形成へ」という目標がいまだに達成できないのは、これまで提供されてきた金融教育が、「あまりに難しく、あまりに過剰」であったからだと思っています。
最近「タイパ(タイム・パフォーマンス)」という言葉をよく見かけるようになりましたが、タイパを最大化するために映画を2倍速で見ているような忙しい現代人に、さらに金融や投資について勉強し、リテラシーを高めよというのは少し酷なのではないでしょうか?
この連載では、「これだけ知っておけば、個人としても社会としても十分」という水準の金融教育を示すことができればよいと考えています。
■筆者/ 我妻 佳祐

1981年山形県米沢市出身
京都大学大学院で生命保険を研究し、2006年に金融庁に入庁。保険行政を中心に金融行政に幅広く従事。
2019年に金融庁を退職し、アクセンチュア株式会社で主に生命保険会社のコンサルティングに携わる。
2022年に公共政策領域でのコンサルティングを手掛けるマカイラ株式会社に転身、
同時期に生命保険買取サービスを提供する株式会社ライフシオンを設立。
京都大学大学院博士(理学)