こうへいさんとみずきさんのお二人は、旅系カップルユーチューバー「サニージャーニー」として2022年4月から日本一周をキャンピングカーで巡る旅をスタート。順調に動画登録者も増えるなか、突如みずきさんにすい臓がん(ステージ4)が発覚。現在は治療に臨みながらがんについての情報発信も行い、時にさまざまな議論も巻き起こすなどしながら、明るさを失わない二人の姿勢に共感と応援が集まっています。今回は、最愛のパートナーが若くしてがんに罹患するという体験を現在進行形で生きるこうへいさんにインタビューを行いました。2人でひとつの夢を追う、家族の視点でこれまでとこれからを見つめます。

夢に向かう人気ユーチューバーとしての生活が一瞬で変わったあの日。いまもコツコツとコンテンツをつくり情報を発信する日々
「高知県に差し掛かったあたりで、みずきが大きく体調を崩しました。現地で可能な限り大きい病院へ行きましたが、うちの病院ではわからないということで愛媛の大きな病院へ自分達の判断で行くことにしました。その道中黄疸が出て、みずきが自分で調べたところ症状からすい臓がんの記事をたくさん見つけ、大急ぎで愛媛へ向かいました。医師にすい臓がんの可能性があると言われたのは愛媛の病院が初めてです」。
こうへいさんは二人の活動が、生活が一変した日のことを回想し「みずきの実家が札幌にあるので、戻って詳しい検査をすることにしたんです。結果、32歳では非常に珍しいと言われたすい臓がんであることがわかりました。1度札幌で腰を落ち着けて治療をしよう、ということになったのです」。
旅系カップルユーチューバーとして人気のこうへいさんとみずきさんは、「サニージャーニー」というユニットを組み、軽キャンピングカーで沖縄から日本を一周する旅を計画のもと、旅の様子をユーチューブで動画配信をしていました。二人のパーソナリティーを活かし、全国各地の観光スポットやご当地グルメの紹介動画や、ロードムービーのようなキャンピングカーでの生活が評判を呼び、着々と登録者数を増やす人気ユーチューバーとなっていきます。そんな折、高知県で体調に異変を感じたのは旅を始めておよそ半年ほどのことだったそうです。
「本当は1年、1年半とかゆっくりと時間をかけて日本一周をしようと話していました。がんがわかったのは旅を始めて半年ほどですから、急な状況の変化に遭遇したのです。旅の動画はそれまで半年間、週3本配信していましたが、以降は動画の種類も変更していきながら続けています。みずきのがんはすい臓がんのなかでも珍しいタイプの膵腺房細胞がんということもあり、経験者の情報も希少なのでそういったことも含めて情報発信していこう、ということになりました。けれど病気のことだけでなく、もともとやってきた旅のこと、みずきの夢であったヨーロッパへの旅の模様などもコンテンツにし、現在も発信を続けています」。
情報発信は大切な収入源、何よりもみずきさんの「続けたい」という強い意思があった
もともと注目度が高いサニージャーニーががんについて発信することは、たびたび話題となってきました。ただでさえ心身過酷な治療生活にあってもユーチューブで発信を続けるモチベーションはどんなものなのでしょう。

「みずきの意思です。最初、がんとわかったとき一番に話し合いました。動画、どうする?って。既に登録者もたくさんいて、僕らの動画を待ってくださる方々もいました。けれど、このまま何も言わずやめてもいいと思う、と当時僕は言いましたが、本人の“続けたい”という気持ちが強かった。今はユーチューブの他にブログや音声メディアといった動画以外での発信も始めています。治療初期にホントにこの先、みずきがどうなってしまうのかわからなくて、余命半年から2年と言われるなか、衰弱して動画を撮れなくなる可能性も含めて、本当に先の見通しが立てられない状態でした。
この先動画という手段が難しくなることがこれから起きるかもしれないし、みずきが “あまり元気じゃない姿を見られたくない”という思いもありましたから」。
そういう意味でもペアの活動であったことでこうへいさんが活動を前進させることができ、みずきさんを第一に考えてあらゆる手段を模索してきました。そして、お二人にとってこれら情報発信は、治療生活を支える大切な収入源でもあります。
時間の大切さを意識するなかで、コンテンツ発信は「二人が支えあう」生きがいのかたちでもある
「やはり金銭面ではとても大きかったです。一般的にはがんになって思うように働くことができなくなったり、それで家族がその分を支えていく必要が出てきたりと、治療生活と充分な収入を両立していくことが非常に大変なことだと思います。でも、ユーチューバーである僕たちは、がんがわかったことである意味需要が生まれ、それによって動画視聴数が伸びるようになったりもしました。それに、自分で働く時間を調整することができますから、みずきを一番に優先して、空いた時間で仕事をし、生計を立てていけるという状況は本当にありがたかった。本当にたまたまそうできた、ということなのですが」と、こうへいさんが語るように、お勤め中の場合は会社に理解をいただき時短勤務を考慮してもらうなど、さまざまな組織内での制約のなかで、完全な休業ではなく「どのようにして働き続けられるのか」という工夫が問われます。

お二人に関してはユーチューバーという働き方が今の状況に非常に合致し、みずきさんも完全にお休みするのではなく体調を考慮しながら仕事をする調整ができたわけです。
「そうですね。これは本人も、僕に支えられるだけよりも“自分も生活を支えていく”という生きがいのような感覚も持てていると思うんです。今は家事も僕が全部してある意味ずっと働き詰めみたいな状態なのですが、それをただ見ているというよりもコンテンツ発信をするということは、みずき本人にとっても心地良く過ごせている理由になっているのかもしれません。
余命宣告を受けていたので、二人の時間を大事にしたいとすごく思っていたので、そうした時間をたくさん持ててこられたのは本当にありがたいことでした」。
今の時代だからこそ叶った、理想的な過ごし方をお二人は見出すことができたのかもしれません。そんなみずきさんは、取材の少し前に手術を受けて入院中でした。ずっと弱音を口にしなかった彼女が術後痛みに苦しむ姿を日々目にし、こうへいさんご自身もおつらい状況下でこのインタビューにご協力をしてくださいました。
【サニージャーニー/こうへい】旅系カップルユーチューバー「サニージャーニー」として活動中。32歳ですい臓がんのステージ4を宣告された妻・みずきと夫・こうへいによるユニット。2022年4月に軽キャンピングカーで沖縄を皮切りに日本一周旅行を計画し、旅の模様をユーチューブで配信し評判となる。2022年11月、がんであることを動画で報告、以降チャンネル登録者数は23万人を超え、旅だけでなく現在はすい臓がんにまつわる情報発信も行いながら、持ち前の明るさを失わず治療を続ける妻を全面的に支援しつつ、コンテンツ制作を担っている。 YouTubeこちらから